剣護身術 公式記録

子どもに本当に必要な護身術とは?防犯・護身の専門家が教える「自分を護る力」

「知らない人について行ってはいけない」。これは子どもの防犯で大切な約束です。しかし、子どもを危険から護るために必要なのは、それだけではありません。

子どもの護身で最も大切なのは、相手と戦う技術ではなく、危険や違和感に気づき、距離を取り、断り、声を出し、その場から逃げて信頼できる大人に助けを求める力を育てることです。

剣護身術では、子どもの護身も「相手に勝つ」ことを目的にしていません。危険から離れ、無事に家へ帰ること。それが基本です。

「知らない人について行かない」だけで十分なのか

「知らない人について行かない」は、分かりやすく大切な教え方です。しかし実際には、「お母さんが呼んでいるよ」「犬を一緒に探して」「写真を撮らせて」「道を教えて」など、一見すると親切そうな言葉で子どもに近づくことも考えられます。

だから私は、知らない人かどうかだけで判断させるより、「何をされそうになっているか」「いつもの約束と違わないか」を考え、違和感を無視しない力を育てることが大切だと考えています。

子どもに身につけてほしい7つの力

1.危険に気づく

護身術は、誰かに腕をつかまれた瞬間から始まるものではありません。人通りや見通し、周囲から見えにくい場所、いつもと違う様子、後ろから長くついてくる人などに気づき、危険に近づかないことも護身です。

子どもを常に緊張させるのではなく、「ここで何かあったら、どこへ逃げる?」と親子で考えるなど、日常の中で練習できます。

2.相手との距離を取る

知らない大人から声を掛けられても、すぐ近くまで寄る必要はありません。相手が近づいたら一歩下がり、さらに近づいてきたらもう一度離れる。距離を取ることは、逃げるための時間を作ることにもつながります。

3.嫌なことには「嫌」と言う

危険を感じた場面では、自分の安全を護るために断ってかまいません。「行きません」「できません」「お母さんに聞いてください」と実際に声へ出す練習にも意味があります。知っていることと、突然の場面で実際に言えることは同じではないからです。

4.必要なときに声を出す

相手がさらに近づく、腕をつかもうとする、後をついてくるといったときには、「やめて!」「来ないで!」「助けて!」と大きな声を出すことも選択肢です。

ただし、怖くて声が出ない場合もあります。防犯ブザーはすぐ使える場所につけ、電池を確認し、実際に鳴らす練習もしておきます。

5.逃げる

危険を感じたら逃げていいと、繰り返し伝えます。「逃げなさい」だけでなく、交番、学校、人のいる店舗、「子ども110番の家」、知っている大人のいる場所など、どこへ逃げるかを親子で確認しておくことが大切です。

6.ランドセルや身の回りの物を利用する

ランドセルやバッグは、相手を攻撃する武器ではありません。状況に応じて相手との間へ入れ、身体への接触を避けたり距離を作ったりするために利用します。ただし、物より身体の安全が優先です。必要なら荷物を手放して逃げます。

7.信頼できる大人に知らせる

危険から離れた後は、保護者、先生、警察など信頼できる大人へ知らせます。小さな違和感でも話せるよう、普段から子どもの話を否定せずに聴く関係を作っておくことも重要です。

ランドセルは「戦う道具」ではなく身体を護るために使う

ランドセルなど身の回りの物を使う目的は、相手を打ち負かすことではありません。身体との間に入れて接触を避け、逃げるための距離や時間を作ることです。物に執着して逃げる機会を失わないようにします。

子どもだけに安全の責任を負わせない

子どもに護身術を教えることは、「危険に遭ったら自分で何とかしなさい」という意味ではありません。子どもの力だけに任せず、家庭、学校、地域、警察や自治体が連携して安全な環境を作ることが必要です。

親子で決めておきたい「もしものとき」のルール

家庭では、「誰と、どこへ行き、何時に帰るか」「予定や迎えの人が変わる場合はどう確認するか」を決めておきます。危険な場面では、子どもへ「逃げろ!」「助けを呼んで!」と短く明確に指示することも、普段から家族のルールとして話し合っておきます。

こうした事前の取り決めは、その場で子どもが難しい判断をする負担を減らします。家族で危険時の行動を考える際は、通り魔・無差別襲撃に遭遇したら?生き残るための行動も参考にしてください。

知っていることと、できることは違う

「知らない人について行かない」「危険なら逃げる」と知っていても、突然の場面で身体が動くとは限りません。声を出す、距離を取る、防犯ブザーを使う、逃げる場所を選ぶといった行動を、安全に配慮しながら体験しておくことが大切です。

これは、剣護身術が大切にする「想定外を想定内にする」という考え方にもつながります。護身術を学ぶ意味については、護身術は本当に役に立つ?「使えない」と言われる理由と専門家見解で詳しく解説しています。

学校で護身術を教える理由

剣護身術では、2010年から学校での護身術出前授業を実施し、2013年7月に「子ども達を護れ!!学校プロジェクト」を発足しました。危険察知、距離、声、逃走、身の回りの物の活用、万が一つかまれたときの行動を、実際に身体を動かしながら体験することを重視しています。

学校現場での指導内容や活動については、子ども達を護れ!! 学校プロジェクトをご覧ください。

子どもの護身術で大切なのは「勝つこと」ではない

子どもと大人には体格や力の差があります。相手を投げる、倒すといったことを中心に据えるべきではありません。つかまれた場合の身体の使い方を学ぶとしても、目的は技を成功させることではなく、拘束から離れて逃げる機会を作ることです。

護身術と格闘技の目的の違いは、護身術と格闘技の違いとは?「勝つこと」と「身を護ること」は同じではないで解説しています。

「想定外」を「想定内」にする

子どもを怖がらせたいわけではありません。何も知らず漠然と怖がるのではなく、「こういうときは、こうすればいい」という選択肢を少しずつ持たせる。それが安心にもつながります。

子どもの護身術とは、相手に勝つための技術ではなく、自分を護り、安全な場所へ帰るための力を育てること。

私はそう考えています。

よくある質問

知らない人について行かないと教えるだけでは不十分ですか?

大切な基本ですが、それだけですべての状況に対応できるとは限りません。声掛けの内容、距離、周囲の環境、違和感も含めて考え、逃げたり助けを求めたりする方法まで具体的に練習することが大切です。

子どもに格闘技を習わせれば護身になりますか?

体力や身体操作などが役立つ場合はありますが、護身の目的は試合に勝つことではありません。危険に気づき、避け、逃げ、安全な大人へ助けを求める判断も必要です。

ランドセルで相手を叩く練習をするのですか?

いいえ。ランドセルなどは攻撃のためではなく、身体との間へ入れて接触を避けたり、逃げる時間を作ったりするために利用します。最優先は逃走と安全確保です。

大声を出せば必ず助かりますか?

学校プロジェクトでは、危険な場面で周囲に異常を知らせ、助けを求めるために大声を発する訓練を行っています。ただし、どの方法も必ず助かると保証できるものではありません。声が出ない場合も想定し、防犯ブザー、逃げる場所、助けを求める大人など複数の選択肢も準備します。

家庭では何から始めればいいですか?

通学路やよく遊ぶ場所を親子で歩き、「危険を感じたらどこへ逃げるか」「誰へ助けを求めるか」を確認することから始められます。外出先、帰宅時刻、迎えの変更などについて家庭のルールも決めておきましょう。

子どもに「知らない人に注意」と伝えるだけでなく、通学路や遊び場の「入りやすい・見えにくい」場所を親子で確認することも、危険を避ける力につながります。犯罪機会論とは?「不審者」ではなく「場所」を見る防犯の考え方で、場所や環境を見る防犯の考え方を解説しています。

解説・監修

ヒーロ黒木(黒木博文)
剣護身術 代表
一般社団法人 国際護身武道連盟(IGBA)代表理事
防犯護身コンサルタント

危険を避け、無事に帰るための「負けない戦い」を護身の基本理念として、防犯・護身の普及活動を行っています。剣護身術の考え方は、剣護身術とはでも紹介しています。

公的機関の参考情報

本記事の専門家見解とは別に、子どもの防犯や登下校時の安全について、次の公的情報も確認できます。

※本記事は一般的な防犯・護身情報を提供するもので、個別の状況における安全を保証するものではありません。

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