剣護身術 公式記録

護身術はいつ始まり、いつ終わるのか?危険察知から離脱までの考え方

護身術は、襲われてから始まるものではありません。危険に遭遇しにくい環境を選び、異変に気づき、違和感を無視せず、距離を取り、必要なら声で意思を伝え、衝突を避ける。それでも避けられない場合に身体を護り、安全な場所へ離脱して助けを求めるまでが護身です。

剣護身術では、相手を倒すことではなく、無事に帰ることを目的にします。ヒーロ黒木(黒木博文)が大切にしてきた「負けない戦い」と、想定外を想定内にするための護身の全体像を解説します。

護身術は、襲われてから始まるものではない

「護身術」と聞くと、腕をつかまれたときの外し方や、攻撃を防ぐ技を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし護身は、危険に遭遇する前から始まっています。周囲を見て、安全に行動できる環境を選ぶことも、早く気づいて距離を取ることも、すべて護身の一部です。

そして護身は、相手を倒したところで終わるものでもありません。安全な場所へ離れ、必要に応じて周囲や警察へ助けを求めるところまでを含めて考えます。

護身の目的は「勝つこと」ではない

現実の危険には、ルールも審判もありません。相手が一人とは限らず、突然の接触や武器の危険もあり得ます。だからこそ、護身において相手に勝つことを最終目的にしてはいけないと考えます。

危険を回避できた。逃げることができた。争いを避けられた。大切な人と無事に帰ることができた。それでいいのです。戦わずに済むのであれば、戦わないことも立派な護身です。

剣護身術が大切にする「負けない戦い」の考え方は、剣護身術とはでも紹介しています。

1.危険に遭遇しにくい環境を選ぶ

護身の最初の段階は、相手と向き合ったときではありません。どのような場所・状況・環境にいるのかを見ることから始まります。人を外見だけで判断することには限界があるため、剣護身術の企業研修や講座では、犯罪が起こりやすい「機会」に目を向ける考え方も伝えています。

人が近づいても不自然に思われにくい、周囲から様子が見えにくい、死角がある、助けを求めにくい、逃げ道が限られている。このような環境的な特徴に気づくことで、危険に近づく前に行動を選べます。目的は街のすべてを怖がることではなく、必要な場面で注意のレベルを上げる判断基準を持つことです。

詳しくは、犯罪機会論とは?「不審者」ではなく「場所」を見る防犯の考え方をご覧ください。

2.異変に早く気づく

周囲の音、人の動き、急に変わった人の流れ、不自然に距離を詰めてくる人物、普段とは違う状況。こうした変化に早く気づけば、それだけ行動を選べる時間が増えます。護身では、この「時間をつくること」が非常に重要です。

危険が目の前まで来てから選べる行動と、まだ距離がある段階で選べる行動は大きく違います。早く気づくことも、技を出す以前の大切な護身技術です。護身術は技よりも危険察知。犯罪に巻き込まれないために見るべきことで詳しく解説しています。

3.「何かおかしい」を無視しない

危険には、はっきり説明できるものばかりではありません。「なぜか分からないけれど、この場所に長くいたくない」「この人との距離を少し取りたい」と感じることがあります。

違和感を感じたからといって、その人物が危険人物だと決めつける必要はありません。一方で、自分の感覚まで無視する必要もありません。少し距離を取る、場所を変える、人のいる方へ移動する。一度立ち止まって周囲を見る。その程度の行動であれば、大きなリスクを負わずにできます。

4.相手との「間合い」を保つ

危険の可能性がある相手が近づいてきたとき、重要になるのが間合いです。剣護身術では、護身における間合いを、危険に対して自分が判断し行動するための空間と時間として考えます。

護身の理想は、つかまれた手を外すことではなく、そもそもつかまれる距離に入らせないことです。距離があれば、離れる、方向を変える、出口へ向かう、周囲へ助けを求めるなど、選択肢を失わずに済みます。護身術で最も大切なのは「間合い」も参考にしてください。

5.逃げられないとき、「声」で境界を伝える

距離を取りたいと思っても、すぐには逃げられない場合があります。そのとき役立つことがあるのが声です。「やめてください」「近づかないでください」と短く明確に意思を伝えることは、相手を挑発するためではなく、これ以上近づかないでほしいという境界を示すためです。

ただし、声を出せば必ず相手が離れるわけではありません。状況によっては、相手を否定したり言い負かそうとしたりせず、興奮を高めない話し方の方が重要な場合もあります。声の役割については、危険を感じたとき「声」はどう使う?で解説しています。

6.「戦わない」という選択肢を最後まで残す

剣護身術では、日本武道にある「鞘の内」の精神を大切にしています。刀を抜いて勝つことだけが強さではなく、刀を抜かずに争いを収めることにも価値があるという考え方です。

現代の護身に置き換えれば、危険を避ける、距離を取る、声をかける、相手を刺激しない、衝突を回避することも護身です。可能な限り相手を傷つけず、自分自身も傷つかずに事態を終えることが理想です。相手を傷つけない護身術とは?「負けない戦い」と鞘の内もお読みください。

7.それでも避けられないときに身体を護る

危険を完全になくすことはできません。突然つかまれる、不意に攻撃される、逃げ道がない、家族を護らなければならないといった状況もあります。そのため剣護身術では、危険察知や距離管理とともに、逃げられない場合に安全な状態へ戻るための身体的な技術も学びます。

技術は相手を倒すためではなく、安全な状態へ戻り、離脱するための手段です。刃物などの凶器が確認できる場合は、自ら接近して制圧しようとせず、可能な限り距離と遮蔽物を確保して離脱することを優先します。刃物を持った人物に遭遇したら?、通り魔・無差別襲撃に遭遇したら?もご覧ください。

8.安全な場所へ離脱し、助けを求める

その場を離れられたら、危険が終わったと決めつけず、明るく人のいる場所へ移動し、必要に応じて周囲や警察へ助けを求めます。家族や子どもと行動するときは、普段から「逃げろ」「助けを呼んで」といった短い言葉や、集合する場所を取り決めておくことも有効です。

想定外を想定内にするとは、すべての危険を予知することではありません。危険に近づかない、早く気づく、選択肢を残す、助けを求めるという準備を重ね、いざというときに少しでも安全な行動を選べるようにすることです。

よくある質問

護身術はいつから始まると考えればよいですか?

危険に遭遇する前から始まります。場所・状況・環境を見ること、異変に気づくこと、距離を取ることも護身です。

危険を感じたら、まず何を優先すべきですか?

相手を倒そうとするより、距離を取り、逃げ道や遮蔽物を確保し、安全な場所へ離脱することを優先します。緊急の事件・事故が発生している場合は110番通報を行ってください。

護身術を学べば安全が保証されますか?

安全を保証するものではありません。危険を過信せず、危険察知、回避、逃走、身体防御、助けを求めることなど、複数の選択肢を準備することが大切です。

解説・監修

ヒーロ黒木(黒木博文)
剣護身術 代表
一般社団法人 国際護身武道連盟(IGBA)代表理事
防犯護身コンサルタント

「相手を倒すこと」ではなく「生きて帰ること」を目的とする「負けない戦い」を基本理念として、防犯・護身の普及活動を行っています。

公的機関の参考情報

本記事は一般的な防犯・護身情報を提供するものであり、個別の状況における安全を保証するものではありません。緊急の事件・事故が発生している場合は110番通報を行ってください。

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