剣護身術 公式記録

護身術と格闘技の違いとは?「勝つこと」と「身を護ること」は同じではない

護身術と格闘技の違いを示すアイキャッチ画像

「護身術を身につけたいなら、格闘技を習えばいいのでは?」そう考える方もいると思います。

格闘技と護身術には共通する技術がありますが、目的は同じではありません。格闘技がルールの中で相手と競い合うのに対し、護身術の目的は危険を避け、自分や大切な人を護り、無事にその場から離れることです。

空手、ボクシング、キックボクシング、柔術、総合格闘技など、格闘技を学ぶことで、身体能力や攻撃への対応力が高まることは間違いありません。実際、格闘技の経験が護身に役立つ場面もあるでしょう。

しかし、格闘技と護身術は、そもそも目指している目的が同じではありません。

格闘技では、決められたルールの中で相手と競い、技術を高め、勝利を目指します。一方、護身術で最も重要なのは、自分や大切な人を危険から護り、無事にその場を離れることです。

「相手に勝つこと」と「自分の身を護ること」。この二つは、似ているようで大きく違います。

格闘技には「ルール」がある

格闘技には、試合時間、認められる技と禁止される技、体重別の階級、審判、原則として一対一といったルールがあります。こうした共通条件があるからこそ、安全性を保ちながら技術を競い合うことができます。

しかし、現実のトラブルにはルールがありません。突然襲われる、相手の体格が大きい、複数人がいる、凶器を持っている、足場が滑りやすい、場所が狭いといった状況も考えられます。

突然発生する無差別襲撃では、技を使う以前の「異変への気づき」「逃走」「遮蔽物の利用」なども重要になります。通り魔・無差別襲撃に遭遇したら?生き残るための行動で具体的に解説しています。

護身で大切なのは、「公平な条件で戦える」と考えないことです。現実の危険を想定した考え方については、実戦的な護身術とは?大切なのは「戦えること」ではなく「無事に帰ること」でも詳しく紹介しています。

護身術では「戦わない」という選択も技術になる

護身術では、相手と戦わずに済んだなら、それが最善の結果になることがあります。不審な人に早く気づく、距離を取る、その場を離れる、近づかせない、周囲へ助けを求める。これらもすべて大切な護身です。

襲われる前の段階から護身は始まっています。技を使うことだけが護身術ではありません。

「護身術は本当に役に立つのか」「使えない状況があるのに、なぜ学ぶ意味があるのか」については、護身術は本当に役に立つ?「使えない」と言われる理由と専門家見解で詳しく解説しています。

「強い人」であっても危険を完全にはなくせない

体力があり、格闘技の経験が豊富な人でも、現実の危険を完全になくすことはできません。見知らぬ相手の能力や意図は分からず、凶器や人数によって状況は大きく変わります。

特に相手が刃物を持っている場合は、素手の相手とは危険性が大きく異なります。具体的な考え方については、刃物を持った人物に遭遇したら?専門家が教える生き残る行動で解説しています。

だからこそ重要なのが、自分の戦闘能力を過信しないことです。戦える力は役立ちますが、「自分は強いから大丈夫」と考えることが、新たな危険につながる場合もあります。

格闘技と護身術では「勝ち」の定義が違う

格闘技では、判定、一本、KO、ポイントなど、勝敗の基準が明確です。しかし護身術における成功は、相手を倒すことではありません。

相手に勝っても自分が大きなけがをしたり、大切な人が危険にさらされたり、その場から離れられなかったりすれば、護身として成功したとは言いにくいでしょう。

護身術における「勝ち」とは、自分自身や大切な人が無事に帰ること。そのために必要な判断と行動を選ぶことです。

剣護身術が考える「負けない戦い」

剣護身術では、危険な戦いを避けること、相手を近づかせないこと、必要であれば身を守り、必要な技だけを使って速やかに離れることを重視しています。

相手を打ち負かすことではなく、最後まで自分や大切な人を護り抜く。それが私たちの考える「負けない戦い」です。

「倒された後」のことまで考える

護身では、技を使った後にどうするのかまで考える必要があります。相手の動きを止めたり、つかみを外したり、距離をつくった後には、周囲を確認し、安全な場所へ移動し、助けを求め、その場から離れます。

「技を決めること」がゴールではないのです。危険を切り抜けて日常へ戻るまでが、護身の一連の行動です。

剣護身術では、まず「近づかせない」

剣護身術では、相手との距離を保ち、手を前に出して境界線を示す「青眼の構え」を大切にしています。それでも相手が近づいてきた場合には、「パームガード」で身を守りながら次の行動につなげます。

相手の危険度に応じて、段階的に対応していくことで、不必要な衝突を避けながら自分を護ります。

もちろん格闘技から学べることは多い

格闘技からは、距離感、反応力、身体の使い方、体力、精神力、相手と向き合う力など、多くのことを学べます。こうした経験は護身にも大いに役立ちます。

大切なのは、格闘技の技術をそのまま現実のトラブルに当てはめないことです。格闘技と護身術には重なる部分がありますが、目的と前提は同じではありません。

なお、護身術を学べば、あらゆる危険に必ず対応できるという意味ではありません。危険を避け、逃げ、必要な場合に身を護るための選択肢を増やすことが目的です。

護身術を選ぶときは「何を目的にしているか」を見る

「どの護身術が最強か」「どの技が一番実戦的か」を比べる前に、その教室が何を目的として教えているのかを見ることが大切です。競技で勝つためなのか、身体を鍛えるためなのか、日常の危険を避けて離れるためなのかによって、学ぶ内容は変わります。

初めて学ぶ方は、初心者におすすめの護身術とは?武道未経験者が選ぶときの5つのポイントも参考にしてください。

護身術の目的は「無事に日常へ戻ること」

危険な戦いを避け、危険に早く気づき、相手との距離を保ち、必要なときだけ技を使い、その場から離れる。護身術が目指すのは、「一番強い人」を育てることではありません。

目的は、自分自身や大切な人を護り、最後にはいつもの日常へ帰ってくること。

「勝つこと」と「身を護ること」は同じではありません。この違いを知ることが、護身術を学ぶ最初の一歩だと私たちは考えています。

剣護身術の考え方や稽古内容は、一般コースでご覧いただけます。実際に体験してみたい方は、体験のお申し込みをご利用ください。

よくある質問

格闘技の経験は護身にも役立ちますか?

はい、役立つ部分はあります。身体操作、距離感、反応力、体力、相手と向き合う経験など、格闘技で身につく能力が護身に活かされることはあります。ただし、現実の危険には試合のようなルールや開始の合図がなく、複数人や凶器、不意打ちなども考えられるため、格闘技と護身術は目的や前提が異なります。

格闘技が強ければ、護身術を学ぶ必要はありませんか?

格闘技の強さは身を護るうえでプラスになる場合があります。しかし護身では、相手と戦わずに済むか、危険を早く察知できるか、逃げられるかという判断も重要です。剣護身術では、戦う技術だけでなく、危険回避や逃走まで含めて護身と考えています。

護身術では相手を倒さないのですか?

相手を倒すこと自体を目的にはしていません。逃げられるなら逃げることを優先し、どうしても身体を護る必要がある場合に技術を使います。目的は勝敗ではなく、自分や大切な人を護り、無事にその場から離れることです。

護身術と武道は同じものですか?

完全に同じではありません。武道には技術だけでなく、稽古を通じた心身の鍛錬や思想など、さまざまな側面があります。一方、護身術は現実の危険から自分や他者の安全を確保することを主な目的とします。ただし、日本武道を基盤とする剣護身術では、身体操作や技法だけでなく、争いを未然に避ける「鞘の内」の精神、日頃の心の持ち方や物事の考え方も大切にしています。稽古を通じて冷静な判断力や自制心を養い、人間的な成長につなげることも、剣護身術が目指す大切な要素です。

解説・監修

ヒーロ黒木(黒木博文)
剣護身術 代表
一般社団法人 国際護身武道連盟(IGBA)代表理事
防犯護身コンサルタント

武道歴約40年。企業・自治体・教育機関などで防犯・護身術を指導。「相手を倒すこと」ではなく、危険を回避し無事に帰るための「負けない戦い」を護身の基本理念として、防犯・護身の普及活動を行っています。

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